2011年12月29日木曜日

Ⅱ型糖尿病

前回はⅠ型糖尿病について書いたので今回はⅡ型糖尿病について書きたいとおもいます。
Ⅰ型がインスリンの絶対的な欠乏だったのに対し、こちらはインスリン分泌の低下、もしくはインスリン抵抗性によるものと考えられています。

こちらもさらに遺伝要因環境要因の二つに分けられます。


●遺伝要因
Ⅱ型糖尿病への関与に関して、さまざまな候補遺伝子が報告されています。
 まずインスリン分泌異常に関与する、プロインスリンからインスリンへのプロセシングに関わる変換酵素であるPC(prohormone convertase)の変異が報告されています。結果としてプロインスリンからインスリンへの変換が低下するのです。ほかにもあるらしいのですが、省略します。
 もうひとつはインスリン抵抗性に関与する遺伝子要因です。こちらにはインスリン標的臓器においてインスリン受容体キナーゼ基質であるIRSやグルコースを細胞内に取り込む際の輸送担体であるGLUTや脂肪細胞分化などに必須なPPARγなどの異常が知られています。※PPARγの合成リガンドであるチアリゾリジン誘導体はⅡ型糖尿病におけるインスリン抵抗性改善薬。

●環境要因
Ⅱ型糖尿病の発症には遺伝要因に加え、環境要因が大きく関与しています。
 食事などによる脂肪や炭水化物の過剰摂取により引き起こす肥満はインスリン抵抗性を増強させ、糖尿病発症に促進的に作用する。また逆に運動はインスリン感受性を亢進することも知られており、断続的な運動が糖尿病発症率を減少させると報告されています。




 Ⅰ型とⅡ型に共通することは、遺伝にしろ環境にしろグルコースを細胞内に取り込むインスリンが機能しないということなんですね。


それでは次は年明けあたりに更新したいと思います。よいお年を

2011年12月23日金曜日

Ⅰ型糖尿病

更新遅れてすいません。大学で発表があったので
ちなみに発表内容は糖尿病と免疫の関係について発表しました。詳細はのちほど

今回はⅠ型糖尿病について書きたいとおもいます。
Ⅰ型糖尿病は膵臓のβ細胞が破壊されることによるインスリンの絶対的不足が成因とされています。今回はそのメカニズムについてお話したいと思います。

Ⅰ型糖尿病もさらに分かれて自己免疫性(ⅠA)と非自己免疫性劇症(ⅠB)があります。

自己免疫性Ⅰ型糖尿病
こちらは簡単に言えば、インスリンなど自分の体のものを敵と見なしてしまい、免疫によりその敵と見なしたものやその分泌細胞を破壊してしまうことです。※インスリンのほかにもGADなどある

インスリン(抗原)はβ細胞から分泌されます。そしてマクロファージのような抗原提示細胞がT細胞に抗原を認識させFas-Faslなどの系によってβ細胞を攻撃する。これが主なβ細胞破壊のメカニズムです。ほかにもパフォーリンを介する系などもありますが報告が少ないらしいので

ちなみにインスリン欠損マウスというのがありまして、マウスには二つのインスリン遺伝子、インスリン1遺伝子と2遺伝子がありますが、両方欠損した場合はインスリンを作れないので、Ⅰ型糖尿病モデルマウスとして見なされます。
しかし、インスリン1遺伝子のみを欠損させたマウスには糖尿病抑制マウスとなるらしいです。このことからもインスリンが抗原として見なされることが示唆することもできます。


非自己免疫性劇症Ⅰ型糖尿病
こちらは特発性Ⅰ型糖尿病などとも言われます。こちらは最近になってひとつの疾患単位として認められたらしいです。しかしこちらのメカニズムはあまり解明されていないのですがウイルスが関与しているのではないかと考えているらしいです。


次はⅡ型糖尿病の発症メカニズムについてお話したいとおもいます。

2011年12月12日月曜日

糖尿病患者におけるストレスと血糖値

今回はちょっと代謝とは外れますが、糖尿病患者における心理的な問題をかきます。



 古くから糖尿病発症のひとつに、ストレスが関与することが言われています。

 まず心理的な面で言えばストレスにより過食が誘導され、それが肥満、糖尿病につながる場合があります。
 またストレスによりアドレナリン、グルカゴン、成長ホルモン、副腎皮質ホルモンの上昇がインスリンを分泌を抑制することも考えられている。



 またある研究では血糖値のコントロールと、患者の心理、人格との関連性についても報告されています。
血糖コントロールの良い群は、情緒豊かで適切に悩み、試作し他人に左右されず、自尊感情も高い、などの性格があげられました。
 逆にネガティブなほうでは非強調、気分易変性、不安になりやすいなどの性格があげられました。
 
 さらに、たいていの人は糖尿病と診断されると後者の症状になりがちなので病状の悪化に繋がると考えられます


このように糖尿病は食事や、運動、遺伝以外にも性格や人格といった因子とも関連があるようです。

2011年12月11日日曜日

糖尿病における代謝

それでは今回は糖尿病における代謝について軽くまとめます。



その前にまずインスリンについての最低限の知識です。
インスリンは膵臓のランゲルハンス島のΒ細胞で作られるホルモンで、機能としてはグルコースの取り込み促進、解糖促進、グリコーゲン合成促進、脂質合成促進などさまざまです。インスリンについてはまた詳しくお話します。


 ではインスリンが不足する、もしくは効かない糖尿病ではどのような代謝がおこっているのか。
インスリンはエネルギー源であるグルコースを血液から細胞内に取り込む働きをしています。その作用が不足すると、グルコースを細胞内に取り込めずエネルギーが不足します。生体はエネルギー源を糖以外から補給しなければいけません。代わりとなるものが脂肪と筋肉中のたんぱく質です。


脂肪の分解:脂肪組織のなかに蓄えられている中性脂肪が分解すると、脂肪酸とグリセロールができて、それが血液の中にはいります。グリセロールは肝臓に行って糖の代謝経路にいき燃えるが、遊離脂肪酸は肝臓にいくと、アセト酢酸、Βヒドロキシ酪酸、アセトンと呼ばれるケトン体を生成します。この進行がアシドーシスと呼ばれる糖尿病の一般的な症状へ。


筋肉中のタンパクの分解:タンパク質が分解すればアミノ酸ができます。そのアミノ酸が肝臓に送られます。肝臓でアミノ酸のアミノ基(NH2)がはずされます。はずれたアミノ基は尿素に変えられ血液中に尿素を放出します。


これが糖尿病における代謝異常の基本となるものです。


こういった背景からインスリンが不足している人はインスリンを打ち、こういった異常を改善していっているわけです。
 
ここで大事なのがインスリンを打っても代謝異常は改善されますが治療はできないということです。

2011年12月4日日曜日

糖尿病とは

まず糖尿病についての基礎知識についてです。



そもそも糖尿病とは、尿中に糖が出る病気のことです。語源はdiabetes mellitus:甘い尿がたくさん出る病気。※mellitusは甘い、もしくは蜂蜜の意味のラテン語。


そんな単純な病気ですが、そのせいで世界の医療費を圧迫するほどの国民病となっています。約1.1兆円(がん、心臓病、高血圧、脳卒中に次ぐ)


しかもいったん発症したら原則治らない病気なのでこれからもどんどん増えていくのは必然でしょう。


いったいどんな病気なのでしょうか。
尿に糖が出ることはあまり問題ではありません。簡単にいえば生体のエネルギー源である糖がうまく代謝できないのです


糖尿病の発症は大きく分けてⅠ型とⅡ型があります。(他にも妊娠によるものや、ミトコンドリア遺伝子異常によるものなどある)

まずⅠ型糖尿病は膵臓Β細胞が壊されていてインスリンの絶対的な欠乏によるもので全体の4%です。Ⅰ型は自己免疫性と特発性があります。


そしてⅡ型糖尿病はおもに生活習慣病によるもので大部分を占めます。
インスリン分泌低下とインスリン抵抗性に分けられます。



これらが発症するとさらに糖尿病合併症といわれるものを引き起こします。
 主なものは以下3つ

●糖尿病性網膜症(視力の低下、失明)
●糖尿病性神経障害(皮膚にヒビがはいり、最悪のケースでは切断)
●糖尿病性腎症(腎機能の低下から腎不全)


このように糖尿病は恐ろしい病気なのです。しかし、適切な食生活や運動などにより予防や改善、治療は可能です。





次回からはまず基礎知識として、糖尿病における代謝を書こうかと思います。その後でより詳しく発症メカニズムや治療法などをまとめます。

最終的にタンパクレベルから遺伝子発現レベルまで詳しくまとめたいと思います。


週1程度で更新していくので興味のある人は是非読んでください。

2011年12月2日金曜日

なぜ太るか?

糖尿病や肥満の前に、なぜ太るのかを考えてみました。


運動不足や食べ過ぎ、そして遺伝など様々な要因があります。

運動や食事と肥満のメカニズムは後々話すとして今回は遺伝因子、その中でも「レプチン」というホルモンについて調べてみました。


レプチンは脂肪細胞で作られる摂食抑制ホルモンです。ギリシャ語の「痩せる」に由来しています。

レプチンは視床下部で摂食抑制系シグナルでホルモンとして働きます。つまり食後はレプチン濃度が上昇して満腹感を与えるのです。
逆に、絶食時は、レプチン濃度が減少し、空腹感を与えるのです。

つまり、このレプチン遺伝子が欠損していたり発現量の少ない人、もしくは感受性の低い人は、摂食が抑えきれなくなり肥満になってしまいます。


このことは飢えとともに歩んできた長い歴史から考慮すると、食欲は肥満の制御ではなく、むしろ飢えに応答することと考えられるようになりました。

つまり進化の過程で獲得したことは、レプチンは上昇するより低下するもの、つまりいかに体脂肪を蓄積するかということにあるようです。



だから肥満の人が急激なダイエットに挑戦すると、飢えに応答してしまいリバウンドをすることが多いのです。


こういった背景から、食事制限などによる肥満の治療は難しいとされています。


最近では、食欲抑制薬が開発されていますが、副作用もあり長期投与は難しいとこから完全な肥満の治療法は見つかっていないのが、現状です。


要するに人間は太りゆく生き物だということですね。

2011年12月1日木曜日

はじめまして

はじめまして

現在、大学で栄養生化学を専攻しています。来年大学院に進学予定です。


まだまだ未熟ですが糖尿病メタボ肥満などをテーマにブログを書いていこうと思います。